作品の題材としては「視線」を一つのコンセプトワードとして、制作しています。モチーフやタイトルには、時間や場所を超えて、人々が「視線」を向け続ける対象を選んでいます。例えば「地平線」や「月」「太陽」などといったものです。万葉集に収められている柿本人麻呂が詠んだ和歌で「天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ」という歌があります。遥か昔に生きた歌人も、現代の私たちと同じように、天を眺め、月を眺め、宇宙の果てに想いを巡らせているのを感じました。時間と場所を超えて、同じものを眺め、同じ想いを抱き、繋がっている事にも面白みを感じます。私が使っている素材も、月や地平線と同じようにいつかどこかで誰かの視線を浴び続けていた素材であり、作品に姿を変える事で再び誰かの視線を浴び続ける事になるのです。
制作年 2020年
材質・素材 廃ブラウン管(CRT)ガラス・黒御影石
主な技法 鋳造