2016年に公開され、大ヒットした映画『君の名は。』の中のワンシーンで描かれた「組紐（くみひも）」。ドーナツ型の木の道具を使って糸を組んで紐を仕上げていくのですが、映画の中で初めて「組紐」の存在を知った人も多いのではないでしょうか。

私は工房を金沢の山間部の自然に囲まれた静かな場所に構え、日々作品づくりに励むかたわら、教室を開くなど普及活動も行っています。

「組紐」は、同じリズム、同じ手加減を繰り返す、気が遠くなるほどの反復作業を行います。それはある種の精神鍛錬にも似た、自分と向き合う時間の積み重ねです。それゆえに、作品が仕上がった時の喜びはひとしおです。

「組紐」は美術品や工芸品として展示するだけではなく、アクセサリーやストラップ、着物の帯締めなど、暮らしの中の様々な場面で、身に着ける人のセンスを引き立てるアイテムとして重宝されます。また他の作家さんの工芸品や宝飾品と組み合わせるなど、伝統を継承しつつ現代的な小物として幅広い使い方ができるのも魅力です。

和の文化は先人たちの暮らしの中で息づいてきた日本ならではのもの。私は組紐教室とあわせて開いている着付け教室などを通して、日本人らしい感性を多くの人に身につけてほしいと願っております。